八木沢峠を目指して −旧道2編−

 
 2009年5月16日10時53分。
右の地図にある旧道1(距離約900m)を約40分掛けて踏破した。
 次は、いよいよ峠越えとなる旧道2の探索である。
旧道2は地図にあるように、峠までの約900mの間に4つのヘアピンカーブを持ち、其処より約150m下って出口へ通じる道である。
 

写真にマウスを載せると画像が変化します。
どう見ても、どこぞの森の入り口としか思えないが、いかがだろう。
この道が、かつて荷物を積んだトラックが唸りを上げながら登って行った道であったとは、俄かには信じ難いのである。
しかし、地図の指し示す通りであるならば、この奥にかつての峠が待っているのである。
時刻は正午まであと1時間となった。
間近に迫る猿達の吼え声に穏やかさとは程遠い心持ではあるが、意を決し、再び森に突入する。
 
 11時08分 コンクリートの側溝
 旧道2は旧道1に比べしっかりとした轍もなく、昨今、車で入る人もいないと思われる。 そんな田圃の畦道のような道をチャリで漕いでいくと道の左側に人工物が見えてきた。コンクリート製の側溝である。 覗き込んで撮ったのが下の写真である。雨の日には川となるのだろうか、この日私はそこを流れる水を確認することはできなかった。 そして、そこにガードレールが無い事も不思議であった。もし取り去ったとしても、支柱ぐらいは残っていそうだが。 現在地
 
 
 11時12分 1番目のカーブを曲がって
 旧道2に入って最初のヘアピンカーブを曲がる。旧道1に比べて道幅が広いような気がする。 カーブ手前でチャリを降り、チャリを押しての登坂となる。道は開けているとはいうものの自然に帰しつつあるそれは、サイクリングには適さないようである。 もちろん、私の脚が非力なだけなのだけれど。 現在地  
 
 
 
 11時13分 ガードレール
 最初のヘアピンカーブを曲がると現れれたガードレールは綻びも無くゆるりとカーブしながら、二つ目のヘアピンカーブに続いている。
今は、本来の役目を離れ、気紛れに訪れる私のような者にかつての道を教えてくれるのである。 現在地  
 
 
 
 11時14分 2番目のカーブが見えてくる
 左手に旧道2の二つ目のヘアピンカーブが見えてきた。かなりの角度で次の坂に入って行くのが分かるだろうか。
カーブ手前で速度を落としつつ、反転しながら再びアクセルを踏み込んでいく・・。
真剣な眼差しでハンドルを握るトラックドライバーの姿を想像してみる。
峠を越えるその時まで、気の休まる時は無かったことだろう。
(写真にマウスを載せると画像が変化します。)現在地  
 
 
 
 11時15分 2番目のカーブを曲がって
 二つ目のヘアピンカーブを登り終えると、先程までの開けた視界とは異なり森に戻ろうとする自然の時間の経過とでもいうような風景となる。 斜面を滑り落ちた倒木は枯れ葉の吹き溜まりとなり、やがてそこには新たな木々が芽吹くのだろう。
しかし、苔むした擁壁が示すように道はまだ続いている。チャリを担ぎ倒木を越えて行く。 現在地  
 
 
 
 11時16分 初めての標識
 森と化しつつある道の脇に錆びた標識が見える。旧道2に入ってから初めて見る標識である。
昔は当たり前であったその存在が、今この時、不思議な光景となっている。
たぶん、それが見たいがために私は此処に来ているのだと確信するのである。 現在地  
 
 
 
 10時16分 森の標識
 さて、この道初の標識は何を知らせようとそこに立っているのだろう。
「警笛鳴らせ!」
確かに、振り返り見れば道は左にカーブし、ブラインドになっているのである。
地図では直線であっても、現地はカーブしているという事実。地図とは指標なのである事を改めて確認する。  
 
 
 
 11時18分 路盤崩落1
 ここは二つ目のヘアピンカーブと三つ目のヘアピンカーブのちょうど中間地点である。路盤が崩落し大きな口を開けている。
口を開いた崖に何本かの枯れ葉の川筋が見て取れる。坂に降る雨は流れとなりこの崖の下へ滝となって落ちていくのだろうか。
崖はその都度にその大きさを広げていき、やがて・・・。 現在地  
 
 
 
 11時18分 路盤崩落2
 崩落箇所を通る時に壁面を仰ぎ見ると、その上の道も崩落していた。
写真は崩落箇所を過ぎてから仰ぎ撮ったものである。ガードレールがブランコのように宙吊りとなっている。
上下同じ位置での崩落である。素人の想像ではあるが、ここはもともと沢であった場所に土を入れて平らにした場所だったのかもしれない。
写真にマウスを載せると画像が変化します。現在地  
 
 
 
 11時19分 美しき風景
 八木沢峠まで残り400mといった所だろうか、三つ目のヘアピンカーブのさきに続く石積みの擁壁に守られた坂道が目前に迫ってきた。 正午前の太陽の光は若葉の緑を際立たせ、私だけの道を柔らかく照らしている。ささやかではあるが幸せな時間である。 現在地  
 
 
 
 11時20分 枯れ枝ではなくそれは
 人や車が通らなくなった道では不思議なものとの出会いや発見がある。もちろん、ただ単に私が無知であるだけなのだろうけれど。
写真もその一つである。道に横たわる枯れ枝。そう、初め私もそのように思っていた。しかし、その真っ直ぐに伸びた枝は生きているのである。 地面から浮いた場所で通せんぼをするように横たわってはいるが、その先は地中にあり、足で蹴り上げる事など出来ない程に頑強である。 これは木の根であると気付くまでには少しばかり時間がかかったのは事実である。しかし、果たしてこれ程真っ直ぐな根などあるのだろうか?
今もこの文章を書きながら確信が持てないのである。  
 
 
 
 11時21分 第3カーブ
 写真は旧道2の三つ目のヘアピンカーブである。もともとタイトなカーブであったと思われるが、今は幼木が群生し始め、一層その狭さに拍車をかけている。
(写真にマウスを載せると画像が変化します。)現在地  
 
 
 
 11時21分 見上げれば再び
 三つ目のヘアピンカーブを登りながら壁面を見上げれば、最後のヘアピンカーブの先に続く道の擁壁が見える。
その先には今回の目標である八木沢の峠が待っているのである。カーブを曲がる度に近づいているという気持に、早く行きたいと心は逸るのであるが、その一方で、この道行きをもっと楽しんでいたいと思うのである。 現在地  
 
 
 
 11時22分 やはり廃道
 三つ目のヘアピンカーブの先の道はご覧の通り自然の植栽がだいぶ進んでいるようである。
のり面の緩やかな崩壊で堆積した土と枯れ葉は道の幅を変え、森に還るための準備は全て整ったかのようである。 現在地  
 
 
 
 11時23分 路盤崩落
 幼木の生い茂る道を、チャリを引きずるようして進んで来たその先がこの写真である。旧道2で最大の難所といって良いだろう。 路盤が無いのである。そう、ここが二つ目のヘアピンカーブと三つ目のヘアピンカーブのちょうど中間地点から仰ぎ見た崩落箇所、その場所なのである。
最短の巾で30cm程だろうか、道とは言い難いそこは点々と生える木がガードレールの役目をしてくれて、人一人が歩くにはそれほどの恐怖はないだろう。 しかし、私には同伴者がいるのである。それも介添えが必要な・・・。
木のガードは人には希望を与えてくれるが、チャリ同伴の私にとっては障害となり、この狭小旧県道をチャリと並んでの通行はどう考えても不可能であった。
私がどうしたかといえば、チャリと並べる場所まで、チャリを先に押し出し、そこで体制を整え、再び、チャリを先に押し出すという方法で通過したのである。 道(?)が比較的平坦であったために出来たのであり、そうでなければ、ここで反転し、どこか下の場所でショートカットするしかないのである。 現在地  
 
 
 
 11時24分 空中のガードレール
 写真は、崩落地点から撮ったものである。宙に浮いたガードレールはどこかうらぶれて寒々としている。  
 
 
 
 11時25分 彷徨えるガードレール
 写真は、崩落地を無事チャリとともに通過した後、振り返って撮ったものである。崩落の深さが分かると思うがいかがだろう。
かつての道を想像できない程に深い谷となっている。道はここで終わったという事だろうか。  
 
 
 
 11時25分 最後のヘアピンカーブ
 この先を行けば、旧道2で四つ目となる、そして最後となるヘアピンカーブがまっているのである。
在るべきところにあるガードレールが頼もしく見えるのは私だけだろうか。旧道1で目にしたガードロープの支柱も松の木の下に見ることが出来る。
共に難所を越えたという安堵感に、相棒の記念撮影をした。 現在地  
 
 
 
 11時26分 あとは真っ直ぐ登るだけ
 写真は、旧道2最後となる四つ目のヘアピンカーブを曲がり終え、進行方向を撮ったものである。
下の道に比べれば、巾も広く、道に生える木々も少なく、散乱する枯れ枝を気にしなければ、チャリに乗って行けそうな気がする。
写真の右端に旧道2で二つ目の標識が写っている。 現在地  
 
 
 
 11時26分 落石注意
 チャリを押して(枯れ枝にタイヤが取られるのでチャリは押して行く事にした。)標識のお顔を拝見する。
「落石注意」たぶん、自動車教習場(昔はそう言った。)でそう習ったような気がする。
しかし、いつも思うのだけど、どう注意すればいいのだろう?ここを通るのは運次第だよと言われてる気がするのだけれど。 現在地  
 
 
 
 11時29分 再び「警笛鳴らせ」
 峠に向かって登る道の北側の高さが幾分身近になってきた頃、旧道2で三つ目の標識がこちらを向いて立っている。
「警笛鳴らせ」である。下で会った「警笛鳴らせ」は青地に白の絵柄であったが、ここに立っているのは黄地に白の絵柄である。
錆び色が黄色に見えるとは思えないので、たぶん、こちらの標識が古い物なのではないだろうか。注意を促す「注意標識」は黄色地であったような・・・。
まあ、遠い昔に習った事なので確かではないのだけれど。
切り通しのような大きなS字カーブの手前で、チャリのベルを鳴らしてみた。「ちーーん!」 現在地  
 
 
 
 11時29分 S字の中
 写真はS字カーブ入り口での一枚である。地図にある峠にはまだ少し距離があるが、S字の先は下りに転じているように見える。
地図上で確認できる等高線は510mの線で、今いる場所がちょうどその地点だと思われるのである。登りと下りの境界を峠と言い換えるのなら、 まさにここが峠といえるだろう。 現在地  
 
 
 
 11時31分 八木沢峠に立つ
 旧道2の入り口より約30分。本日最大の目標である八木沢峠に到達した。
写真はこの峠でしか見ることの出来ない(たぶん)「ブレキーテスト」の看板である。
山側の福島市方面から太平洋側の原町市に入る時、この峠を越えて行く車はこの先で待ち構える数多のヘアピンカーブを下って行かなければならないのである。 長い長い下り坂に入るその前に、ブレーキの効きに問題が無いかどうかを確認しておきなさいという、現在であれば、人情味あふれる案内と微笑ましくもあるが、当時の車はそれ程の物であったのかもしれない。
 さて、峠には着いたものの、終点はまだ先である。道が下りに転じた今こそ荷物の一つでしかなかったチャリが本来の力を発揮する時なのである。
サドルに跨った私は、ゆっくりとペダルを踏み込んだのである。 現在地  
 
 
 
 11時33分 旧道2を突破す
 2009年5月16日午前11時33分。旧道2の探索は終了した。
写真の車止めの向うが今しがたチャリと共に走ってきた旧道2である。この場所もまた、一見してこの先に道があるとは信じ難い雰囲気である。 しかし、紛れも無くこの先にかつての県道があり、先ほどまで私はその道を辿って来たのである。
高ノ倉ダムサイトを出発してから3時間、旧八木沢峠探索はここに終了したのである。 現在地  
 
 
 
 Y字路にて
 写真は旧八木沢峠へ続く旧道入り口を、少し離れた位置から撮った一枚である。砂利の道は写真の右側へと続いており、 今尚生きている道である。旧道が車止めで塞がれている現状に、此処をY字路というのはおかしいのかもしないが、 旧道を通って来た者にとってここはやはりY字路なのである。
 今日の目標である八木沢峠の探索を終了した今、このY字路が問題なのである。
体調に今ひとつ自信が持てない状況では、ここがターニングポイントとなる場所なのである。 撮影位置側に進路を取り県道12号線に出て、現八木沢峠を越えデポ地に戻るのか、写真右に進路を取り、リスクの大きい新たな探索を始めるのか。
しばしの間、このY字路で思い悩んだのである。  
 
 
 
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