中丸木林道を行く −その1−

 
 2008年6月7日、三程林道を走破(「山チャリ事始め 三程林道を行く」)してから三週間が経過した。
先の三程林道は、私にとって初めてとなるマウンテンバイクによる山道走行と、初めて尽くしの体験に自転車の楽しさを知ったのであるが、 全ての区間が舗装道路であった事にどこか釈然としない思いが残ったのも事実であった。
 私のマウンテンバイクに対するイメージは、砂塵を巻き、砂利を撥ね、水を割って疾走する姿なのである。
そんな妄想を抱いて選んだ道は、東大森山西麓の標高約600mをピークとし、浪江町と大熊町を繋ぐ「中丸木林道」であった。

 
 10時33分 高瀬川渓谷へ
 10時少し前に自宅を出発し、途中コンビニに寄ってから高瀬川沿いの道を上って来た。
写真は県道253号線の大堀地区での小休止中のものである。
 
 桜の季節も過ぎ、柔らかな新緑が日々その色を濃くしつつある。 初夏を思わせる良天に木陰はチャリ乗りのオアシスとなる。
 道端のベンチから今まさに進まんとする方角を見る。
二車線の舗装道は山に向かってどこまでも続いているように見えるが、傍らに立つ標識は幅員減少を示し、この先が平穏な道では無い事を暗示しているようだ。
 高瀬川渓谷新緑の風景である。
木々の緑が写り込んだ水面に、渓谷は文字通り緑一色となっている。
 
 11時16分 中丸木林道北側入口
 
 大堀地区から県道253号線を8.5km、約40分で本日の目的地「中丸木林道」の入口に到着した。
 かつてこの道は森林軌道であったという。 果たして、この先にはどんな風景が待っているのだろうか。初めての道を行く時はいつもそうだが、期待よりも不安が大きいものだ。
 行く先を見れば、車の轍も鮮明な未舗装の道が続いている。  タイヤ越しに感じる砂利の感触を確かめるながら、ゆっくりとペダルを漕ぎ出した。
↓マウスを乗せると画像が変化します。
左の地図は現在地を表している。
 尚、画像の上で虫眼鏡のアイコンをクリックすると、拡大画像が表示され、もう一度クリックすると元の画像に戻ります。  
 県道と並んで西を目指していた道はここで高瀬川を渡り、南へと行く先を変える。
橋の名は「中丸木橋」で、森林軌道の拡幅工事に伴い付け替えられたと聞く。
 
 11時25分 真草林道
 
 林道入口より約1km。道の右側に山の神様の鳥居が現れた。
「真草林道」の入口である。  
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 真草林道は昭和57年度起工とあり、この地区でも比較的新しい林道のようである。
 林道入口には橋が架かっており、その橋を渡って道はほぼ直角に北を向く砂敷きの登り坂となっていた。
少しだけ登ってみようと試みたのだが、道脇にトグロを巻く妖しい者を眼にした途端心が折れた。
 写真は橋の上から中丸木沢を写した物である。 モミジだろうか、秋の紅葉も美しいだろうが、新緑の今も美しいと私は思う。
 
 疾走?いいえ、失走。
 
   この中丸木林道は嘗ての森林軌道であったと先に記したが、その遺構といえる物は乏しいようである。
写真の擁壁も苔生してはいるが、往時を偲ぶ物かどうかは判断しかねるが、たぶん軌道廃止時の自動車道への拡幅工事の物だろう。
 道幅は車一台程であろうか、まあ、チャリで行く身には十分である。
 この辺はまだ沢と道の高低差はさほどなく、道脇の砂防ダムの落流の音も身近であり、変化の乏しい景色のアクセントとなり、非力なチャリストに束の間の安らぎを与えてくれる。
 地図ではほぼ直線を描く道ではあるが、実際には先の見えない小さなカーブの連続なのである。
 左カーブを過ぎれば、右カーブが待っている。
道は下る事無く登りが続いている。
 歩く程のスピードで漕いでいる身がだんだんと虚しくなってくる。
既に、砂塵を上げての疾走なるイメージは跡形も無く、まさに失走状態である。
 
 11時40分 中の沢橋
 
 林道入口より2.3km。「中の沢橋」に到着した。
地図を見て頂けば分かるが、いつのまにか道は中丸木沢を離れ、その支流に沿って進んでいた。
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 左の地図をクリックして拡大して見て頂きたい。
拡大した地図の赤色の破線は中の沢に沿って山中に続く森林軌道を記した物である。
今来た道に森林軌道の遺構といえる物を目にする事は無かったが、この中ノ沢の森林軌道には、今も数多くの遺構が存在しているという。
 
 11時41分 登り続ける道
 
 中ノ沢橋を渡ると道は鋭角なカーブとなり、再び中丸木沢に沿って高度を上げていく。
写真はカーブ途中にあった看板である。
「伐倒作業中」と書かれた看板の後ろに立っている「頭上注意」の看板の絵に、私は思わず空を仰ぎ見た。
角材はともかく、スパナまで落ちて来られたのではたまらないからである。  
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 恐る恐る登って行くと、そこは「伐倒作業」は終わっているようで、枝を払われすっきりとした杉並木であった。
 払われた杉葉や剥かれた樹皮が散在する道に、林道が林業を生業とするための作業道であるという事をあらためて感じるのである。
 11時52分、杉並木が途切れ、視界が開ける場所に出た。
この場所は伐採された材木の集積場所だろうか、トラックと思われる轍も見て取れる。
 時刻は昼間近となったが、道が下りに転じる様子は無い。
ちょとした広場である事から、此処で小休止とする。
 写真は道端にあって、紅色も鮮やかな"空木(ウツギ)"である。
・・・たぶん。
 さて、ぼちぼち出発するか。
道の両脇から張り出した緑の天幕が正午の太陽を遮ってくれる。
自然の成り立ちに感謝しながら、再びチャリを押して行く。
 写真の黒い物体が何であるかお分かりになるだろうか?
私はこの道に入って初めて見た物である。初めこれを鉄製と思い、なんというものを道に設置しているのだろうと訝っていたのだが、 実際はゴム製であった。(当たり前か・・・)
 想像するに、これは雨水や脇水を路肩に誘導し、路面崩壊を防ぐ為の物なのだろう。
未舗装のこの道には相当の数が設置されていた。
 
 ただ今、高度300m。まだまだ上がりま〜す。
 写真は表題の通り本林道の高度300m地点のひとコマである。
道はいまだ沢沿いにあって、辺りを睥睨する位置には至っていない。
 先を見れば、鬱蒼と繁る樹木のトンネルが黒い口を開いて待ち構えている。  
 
 
 
 "トンネル"を抜け、ホッと一息をついてのセルフポート。
首に巻いたタオルはオシャレとは程遠いが、山を行く者には必需品であろう!?
 右は現在地を示す地図である。
画像上にマウスを乗せ、クリックすると拡大します。
 進む程に道は様々な表情を見せてくる。
若葉と木洩れ日、光と影。
緑色と枯色。
 橋が見えてきた。
地図で見る限り、この林道最後の橋である。
マウスを乗せると画像が変わります。  最後と思われる橋をわたり右にゆるりと曲がると、左手に見えたのが写真の砂防ダムである。
平成18年度とあり、見かけ通り極最近に作られた物であり、この辺りは"地蔵の石沢"と呼ばれているようだ。
砂防ダムを正式にはコンクリート"谷止工"というようだ。
丸太で覆われた姿は、景観に配慮しての仕様なのだろうが、流れに垂れる木の表皮がちょっと・・・ね。
 右は現在地を示す地図である。
林道入り口より3.5km。高度は350mとなった。
ゴールはまだ遥か遠い。
 
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